研究内容

研究プロジェクト

CCS(二酸化炭素貯留技術、Carbon dioxide Capture and Storage)

二酸化炭素の再資源化

持続型炭素循環システムの概念
持続型炭素循環システムの概念

地球温暖化と化石エネルギー資源枯渇の問題は、今世紀の科学・工学にとっての大きな課題ですが、前者への工学からの回答の一つがCCSです。CCSは、地圏から採取した炭化水素に起因して人間生活圏で発生する二酸化炭素を再度地圏に戻す行為であり、炭素循環の観点からは存在位置の循環(地圏→人間生活圏→地圏)を達成するものです。しかしながら、存在形態の循環は破壊されたままであり、これを再生(炭化水素→二酸化炭素→炭化水素)しない限り、炭素循環に完全な持続性を付与することはできません。
CCSは結果として、比較的高温に保たれた地層中に二酸化炭素の濃集状態を出現させます。温度保持下での濃集という熱力学的に優位な状況に着目し、貯留層に棲息している微生物群のメタン産生能を活用することで、二酸化炭素の炭化水素への変換(再資源化)を実現するシステムを現在検討しています。このシステムは、地球温暖化ばかりでなく化石エネルギー資源枯渇に対しても、同時に有効な解を与えるものです。

本プロジェクトでは「微生物のガス産生能向上技術による持続型炭素循環システムの最適化」に資するための要素技術の研究と、それを統合した最適化手法の開発を目的としています。実際に、微生物起源のメタンは水溶性天然ガスなどの形態で広範囲に確認されており、持続型炭素循環システムは、これに準じたプロセスをCCSの対象層において自然調和的に活性化しようとするものです。そのために先ず、地下微生物混在環境下における有用ガス産生挙動の解明を通じて炭素変換の稼動効率を定量的に評価し、次に、微生物代謝活性への影響因子の解明と理解の深化を通じて二酸化炭素のメタン変換を人為的に加速・制御する技術の開発を目指します。更に最終段階では、これらを統合した持続型炭素循環システム最適化手法の開発・検証を行う予定です。

  1. 「二酸化炭素の処理と天然ガス鉱床の再生・創出を目的とした持続型炭素循環システム」、平成17年度~平成19年度、科学研究費補助金
  2. 「微生物のガス産生能向上技術による持続型炭素循環システムの最適化」、平成20年度~平成24年度、科学研究費補助金

貯留層モニタリング

地中貯留されたCO2の移動の把握や漏洩の検知を目的としたモニタリングは、CCSの安全な操業に必須であり、その実施時期に応じて以下のような役割を担っています。

  1. 圧入前:CCSの計画・設計にあたってのCO2圧入以前の基準値の確定、地質構造の把握、リスクの評価。
  2. 圧入期間:貯留の安全性や効率性に関連する事項の把握。モニタリングの結果は圧入手法にフィードバックされる。
  3. 閉鎖期間:圧入が終了してからのCO2挙動が想定の範囲内であることの確認、継続的モニタリングを完了してよいかの判断。
  4. 閉鎖後:漏洩の疑いがある場合などに新たな情報の収集。

モニタリング手法としては、石油・天然ガス開発の種々の場面で用いられている技術が応用でき、地震探査、電気・電磁探査、重力測定、坑井内物理検層、坑井内ならびに坑井間弾性波トモグラフィー、坑口ならびに地中圧力測定、地層水組成分析などが考えられます。これらの技術をそれぞれの実施時期の目的に応じて適切に組み合わせ、効率と精度の高いモニタリングシステムを構築することが求められており、現在、その最適化に関する研究を行っています。
一方、その行為自体は利益を産まないCCSにおいては、より簡便かつ低コストのモニタリング手法が望まれることから、既存技術に捕われない新規技術の開発にも取り組んでいます。その一つとして、地球潮汐を利用した貯留層モニタリング手法があります。これは、月や太陽などから受ける起潮力によって生じる周期的な貯留層圧力変動を解析することによって、CO2の飽和率を評価するものです。この例のように、測定のための外乱として人工的なエネルギーを必要としないパッシブモニタリングは、CCSにおけるモニタリング手法として更なる研究開発が望まれる分野です。

  • 地球潮汐による余緯度と経度方向の垂直歪
    地球潮汐による余緯度と経度方向の垂直歪
  • 地球潮汐による周期的圧力変動の解析
    地球潮汐による周期的圧力変動の解析
  1. 「二酸化炭素地中隔離技術における長期安定性予測手法の研究」、平成13年度~平成15年度、科学研究費補助金

坑井封鎖技術

室内実験の様子
室内実験の様子

CO2の地中貯留に使用する圧入井や観測井などの坑井は,地下へのアクセス手段であると同時にCO2が地表へ漏洩する道筋にもなり得る危険を孕んでいます。CCS事業が終了して坑井が封鎖された後の何百年,何千年という長い期間にわたってCO2が坑井を通して地表へ漏洩することの無いように,坑井の掘削,仕上げ,封鎖(廃坑)が確実に行われなければなりません。
一般には,石油(および天然ガス)坑井の廃坑において現在確立されている技術や法規制に基づいて坑井を封鎖すれば,廃坑後にCO2が漏洩する危険性はまず無いと考えられています。しかしながら,近代石油掘削の歴史は高々100年程度しかなく,これまで経験したことのないような長期間にわたって漏洩が絶対に無いと言い切ることはできません。そこで,より確実に坑井を封鎖する技術のひとつとして,ベントナイトと呼ばれる粘土から作ったスラリーを坑井周辺の地層中に圧入して孔隙を閉塞し,貯留層内のCO2が坑井に向かって移動するのを阻止する手法に関する研究を進めています。
石油掘削では,ベントナイトを水に混合してスラリーにしたベントナイト泥水を坑井内に循環する方法が古くから用いられてきました。しかし,水に触れると膨潤する性質のあるベントナイトは水とのスラリーでは地層の孔隙中に侵入し難いため,坑井封鎖技術への応用では,ベントナイト粒子を微粉末化し,水の代わりにエタノールに混合して膨潤を抑制したエタノールベントナイトのスラリーを用います。ベントナイト自体は石油掘削の世界では馴染みの深い材料ですが,エタノールベントナイトの利用に関する研究はまだ始まったばかりといえ,現在は,ガラスビーズを充填した模擬岩石を用いた室内実験によってエタノールベントナイトの地層中への圧入挙動の把握を行っています。

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