研究内容

研究プロジェクト

メタンハイドレート:探査、開発

メタンハイドレート探査

未来型の資源として期待されるメタンハイドレート(以下MH)は、現在国内外において、その資源化に向けた研究が積極的に進められています。とりわけ少資源の我が国にとっては、将来の国産資源としての可能性が大きく期待されています。我が国における今後の展開は日本近海における海洋産出の実用化を目指すことにあり、さらに将来に渡って安定して産出するために産出に適したMH濃集帯を検知すること、またその濃集メカニズムを解明することが重要になってきます。現在、弾性波の速度情報を主体とするMH濃集帯の探査が実施されています。MH層は、弾性波動伝播の観点では高速度帯として特徴付けられるため、MH飽和率と弾性波速度(主にP波速度)との定量的関係を推定することが資源量評価の点で重要となります。しかし、MH飽和率とP波速度との関連性については、P波速度がMH自体でなく、MH・砂粒子・孔隙内流体からなる混合系の弾性パラメータを反映するため、単純に関係付けられない場合もあります。このような場合、S波速度を併用してMH飽和率を推定することも一つの方法ですが、S波速度情報を得ることは一般的に容易ではありません。

そこで、減衰特性を利用することに着目します。弾性波速度が大きな物質の弾性波減衰は、物理的には小さいことが予想されますが、実際はMH層における高減衰現象が観測されています。このような減衰現象を引き起こす減衰メカニズムについて、孔隙スケールでの粒子と孔隙中に存在する流体との相互作用であることが理論的に指摘されているものの、その詳細については未解明の部分が多く、減衰特性を利用してMH層を評価するための理論体系は未整備な状況にあります。本研究では、MH層の弾性波減衰特性に着目することにより、現象理解(観測データ解析)・室内実験・理論構築の一連の検討からMH層の資源量評価に資する情報(MH飽和率など)を推定する方法論を包括的に確立することを目的としています。また、減衰特性以外の物理特性との融合による評価手法についても検討し、さらにMH集積メカニズム等の地質モデルを加味することによるMH層に関する統合的な評価法を提示することも目指します。

  • 室内実験による波動電播研究
  • 岩石物理学に関する理論的研究
  1. 「メタンハイドレート賦存層の弾性波減衰特性に関する室内実験・岩石物理学的研究」、平成18年度~20年度、文部科学省科学研究費補助金

メタンハイドレートの開発

全世界の海域に存在するメタンハイドレートには1000~5000兆m3のメタン資源量が推定されており、その資源ポテンシャルは膨大です。在来型天然ガスの究極可採資源量436 兆m3と比較すると2~11倍の量であり、海洋メタンハイドレートの10%が開発可能になれば、34~172年分の天然ガスの供給が可能になります。特に、日本周辺の全海域に分布するメタンハイドレートには約12兆m3(日本の国内ガス消費量の100年分以上に相当)のメタンガスの存在が推定されることから、日本のエネルギーセキュリティ確保に貢献する新たな国産エネルギー資源として期待されています。英国が北海油田を発見して石油・天然ガスの供給国となったように、日本がエネルギー資源大国となるのも夢ではありません。さらに、メタンハイドレートは石油等の他の化石燃料に比べてクリーンなエネルギー資源であり、その開発早期実現化は地球温暖化対策へ大きく貢献します。しかし、ここで克服しなくてはいけない大きな工学的問題が存在します。それは、メタンハイドレートが在来型天然ガス資源と異なり地層内に固体として存在するので、『メタンハイドレートから経済的にガスを地上に回収する技術が確立していない』という問題です。

この問題解決にあたって、当センター教員は、メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム(経済産業省)に参加し、(独)産業技術総合研究所等との共同研究で、メタンハイドレート層からのガス生産挙動を予測するための貯留層シミュレータ(MH21-HYDRES: MH21 Hydrate Reservoir Simulator)を開発しています。

MH貯留層シミュレーターの開発とフィールド坑井での地層内におけるMH分解挙動シミュレーション

MH21-HYDRES は、MH層を対象とした世界で数少ないシミュレータの一つで、地層内でのメタンハイドレート分解、ガス・水・塩成分の流動、伝熱現象を記述する非線形連立方程式を完全陰解法で解き、MH層からのガス生産挙動を予測する数値計算プログラムです。MH21-HYDRESを利用して、減圧法、熱回収法等のガス生産手法の評価、メタンハイドレート層からのガス生産試験の計画策定・解析、日本近海のMH開発経済性評価を行っています。

ガス圧入によるMH分解採収のシミュレーションと実験

また、減圧法によるMHからのメタン分解採収法は有望な生産手法の一つですが、将来のMH開発を念頭におくと、より高回収率でかつ環境に調和したメタン生産プロセス(MHガス増進回収法)の研究開発が必要です。現在は、海底下のMH層内にCO2ガスを注入することによりCO2をハイドレートとして固定しながらMHからメタンを回収する方法に関する研究を行っています。熱力学的にはCO2ハイドレートはメタンハイドレートよりも安定なので、この生産手法は可能です。しかし、ハイドレートの分解・生成反応は表面反応であり、また堆積物は多孔質媒体なので、孔隙に存在するMHに如何にCO2ガスを接触させるかが大きな課題です。コア試験装置を用いた実験と数値計算による検討により、新しい生産プロセスの提案を目指しています。

1999年の基礎試錐「南海トラフ」で海底下地層中から多量のメタンハイドレートコアを採取したのを契機にして、将来資源としてMHが注目され始めましたが、2008年3月に行われたカナダ北西準州・マッケンジーデルタのMH層からのガス生産試験で大成功を収めたことから、今後のMH資源開発研究は基礎研究から実用化研究の段階へ移行していきます。現在、当センター教員は、メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアムにおいて、生産手法開発グループのサブリーダー、コンソーシアムの運営協議会メンバーとして国の研究をリードしています。日本周辺海域のMH開発の早期実現を目指して、チャレンジングな研究に取り組んでいます。

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