研究内容

研究プロジェクト

石油・天然ガス:エネルギー収支分析、先端掘削技術開発(EOR)

エネルギー収支分析

人類は、木材、石炭、石油とより良質なエネルギー源へと変遷させながら高度な文明を築きあげてきました。エネルギーの「質」は、私達の社会の質を決定する重要な要素です。全世界の石油生産量がピークを迎えてその後は減退するという石油ピーク論がメディア等で取り上げられることが多くなってきました。背景には、昨今の油価高騰が現実問題として我々の生活に影響を与え始めたことがあります。しばしば「枯渇」という表現がされますが、これは正しくありません。なぜなら現在の議論では、「人類が利用可能な石油の半分を使いきったかどうか」が焦点になっているからです(全世界の石油生産量は、釣り鐘状に変化し、ピーク時はちょうど中間地点になると言われています)。「まだ半分あるなら、安心ではないか」と思うかもしれませんが、エネルギーの「質」を理解する重要性がここにあります。

採取の困難さを数学的に表現するための一つの方法として、エネルギー収支比(EPR: Energy Profit Ratio)があります。例えば地下に存在する石油を採取する場合(図)、抽出過程においてエネルギーが投入され、石油というエネルギーが回収されて、また回収エネルギーの一部を投入エネルギーとして使用し石油を抽出するということを繰り返します。この図は、人類が自然界から一方的に有限資源を採取する構図であると捉えることができます。EPRは回収エネルギーを投入エネルギーで割り算することにより得られ、その比が1以上にならないとエネルギー的に無駄をしていることになります。このようなエネルギー収支的な考え方は、他の自然エネルギーなどにも適用できます。

現在、easy oil(容易に採取できる石油)の時代は終わったと認識されていて、これまで開発対象にならなかった、大水深、極地、小規模など条件が悪い油田の開発に目が向けられています。石油を生産する過程においては、技術革新効果と地質的限界の相互作用により、その生産量が決定されてきますが、仮に技術革新効果によって生産量を維持したとしても、エネルギー収支の観点からは、採取の困難さ、すなわちその「質」が劣化するのか見極める必要があります。

石油の「質」が低下すると、社会にどのような影響をもたらすのでしょうか。石油の「質」の低下に伴い、石油回収のためにより多くのエネルギーが必要になります。それまで経済活動に投入されてきた資金あるいはエネルギーは、石油回収のために振り向けられることになります。結果として、燃料費は高騰し、個々の企業は燃料高による影響を受け、製品価格高騰による需要減退が起こります。すなわち、インフレ(物価高騰)と景気後退の混合状態(これをスタグフレーションと言います)をもたらし、我々の社会に深刻な影響を与えうるのです。

 
EPR定義

「石油を代替するエネルギーにシフトすればよいではないか」と思うかもしれませんが、食料・運輸・化学製品に至るまで私達の生活は石油漬けと言っても過言ではなく、その転換には非常に長い期間を要します。また、エネルギー収支の観点でeasy oilと同等な質を有するエネルギーは出現しないかもしれません。とすれば、解決の道筋はエネルギー消費構造を抜本的に変革するしかありません。エネルギー・資源論の視点から社会システムのあり方を探求していく必要があります。その基軸として、エネルギー収支的着眼点は重要な役割を果たします。その一方で、今後我々は石油代替エネルギーへのシフトを進めていかなければなりません。そこでも代替となるエネルギー収支評価は重要です。

  1. 「ミクロスケール不均質構造における弾性波動伝播メカニズムと波動場処理に関する研究」、平成20年度~22年度、独立行政法人産業技術総合研究所との共同研究
  2. 「ウランをリサイクルする場合のエネルギー収支比評価」、平成20年度~21年度、財団法人電力中央研究所との共同研究

先端掘削技術開発

坑井掘削技術は石油・天然ガス開発のみならず,地熱資源やメタンハイドレートなどの多様な地下資源開発,統合深海掘削計画(IODP)に代表される学術調査,CO2や高レベル放射性廃棄物の地中貯留などの環境・防災の分野においても重要な役割を担っています。今なお十分に解明の進んでいない地球の内部を理解し,地殻深部を開発・利用することを目指して,一万メートルを超える大深度・大偏距の坑井を安全かつ効率的に掘削するための最先端の掘削技術の開発に取り組んでいます。

大偏距掘削におけるカッティングストランスポートに関する研究

傾斜坑井の掘削では,坑井内に堆積する掘屑(カッティングス)が,ドリルパイプの抑留や高トルク・ドラグの発生,坑内圧力の増大などの重大な掘削トラブルを引き起こすことが少なくありません。このため効率的な油田開発に大きな威力を発揮する大偏距掘削(Extended Reach Drilling,ERD)において,適切な掘屑の運搬(カッティングストランスポート)はその成否を決める重要な鍵のひとつとなっています。そこで,実験と理論の両側面から傾斜坑井内のカッティングストランスポートに関する研究を実施し,実用的なカッティングストランスポート挙動シミュレータの開発および坑壁不安定や坑井内の圧力管理などの関連する問題への応用について研究しています。

掘削機器の振動を利用したリアルタイム坑井内モニタリング技術に関する研究

坑井掘削の現場では,さまざまな計測データを常時監視することによって坑井内の状態を把握し,より効率的に坑井を掘削する努力がなされています。しかし,人間の目で直接見ることのできない地下深くの坑井内の状態を正確に把握することは極めて難しく,坑井掘削は今なお経験的技術に依るところが大きいのが現状です。そこで,掘削時のビット振動を計測し,その振動特性の変化からビットの摩耗状態や掘削中の地層を診断する手法の開発を目指して,それに必要となるビット振動シミュレーションなどの要素技術の研究に取り組んでいます。

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