我々の世代に突きつけられた地球規模での環境とエネルギーのジレンマを前に、大学における研究成果には実効性の付与がこれまで以上に求められ、実践的工学による具体的解決策の導出が急務となっています。この要請に応えるために学者は象牙の塔に籠ることなく、研究対象とする課題の空間・時間的総体を社会とのつながりの中で確認しながら思考し行動すべきと考えます。本センターにおける研究活動では、産業界との密な連携にも留意し、研究に対する社会からのフィードバックと相互協力を最大限に活用しようと考えています。また、そこで得られる研究成果や問題の解決策については、多面的に吟味することが重要であると強く感じます。産業革命以降の飛躍的な利便性の向上に人知の集積として工学は大きく寄与しましたが、利便の対としての環境破壊を予見しこれを回避する手立てを事前に示してはくれませんでした。工学の人類への貢献は勿論認めた上で、工学の産物がリスクフリーではない事実も自戒をもって受け入れるべきでしょう。自然の系との調和性を尺度にするなど、環境とエネルギーのジレンマに対する解のロバスト性をより高めることに留意しながら、評論家然とした傍観者になることなく、自ら問題解決に当たる研究者であり続けたいと思っています。