東京大学

Frontier Research Center for Energy and Resources(FRCER)
School of Engineering,The University of Tokyo

二酸化炭素回収・貯留 Carbon-Dioxide Capture and Storage

佐藤光三教授 Kozo Sato, Professor
小林 肇准教授 Hajime Kobayashi, Associate Professor

持続型炭素循環システムの構築

化石燃料起源のCO2が自然の炭素循環を乱しています。環境共生の観点からはCO2を地圏(産生源)に封じ、炭化水素(従前の形態)に変換することが自然調和的行為です。炭化水素はエネルギー源として再利用でき、エネルギー枯渇問題へ一つの解を与えます。炭素循環に持続性を付与することで、環境とエネルギーの相補的システムが構築できます。そのために、CO2地中貯留の最適化、CO2のメタン変換等を研究しています。

持続型炭素循環システムの構築

微生物を用いたカーボンエネルギー変換技術

二酸化炭素回収・貯留(CCS)により地中貯留された二酸化炭素を微生物の作用によりメタンに変換し再利用するための要素技術群の開発を中心に、メタン生産に関わる地中微生物生態系の理解と地下でのCO2還元技術に関する新発想の検証に関わる学際的な研究と、産業界との研究交流と先端の科学知識に基づいた実践的な教育を行っています。

微生物を用いたカーボンエネルギー変換技術

潮汐信号解析によるモニタリング技術

地球は太陽系の天体(特に太陽と月)からの重力影響下にあります。固体地球は弾性体としての性質を持つため、天体の起潮力に起因する潮汐変形現象(地球潮汐、海洋潮汐、大気潮汐)を呈することになります。地球潮汐は孔隙体積を収縮・膨張させ、結果として貯留層の圧力振動(収縮時の上昇と膨張時の下降)を引き起こします。海洋潮汐は海底面の周期的な圧力振動を生み出し、これは貯留層内の流体にまで伝播します。大気潮汐も海洋潮汐同様の機構により、貯留層の圧力に周期的な変化をもたらします。日周期ならびに半日周期の圧力変動を圧力データから抽出し、これを用いて地球の様々な物性を評価するのに利用することが考えられます。

潮汐信号解析によるモニタリング技術

海底鉱物資源 Seafloor Mineral Resources

加藤泰浩教授 Yasuhiro Kato, Professor
安川和孝講師 Kazutaka Yasukawa, Lecturer
大田隼一郎助教 Junichiro Ohta, Assistant Professor

深海底のレアアース泥の探査・開発

レアアースはハイブリットカー、液晶テレビ、軍事機器に至るまで様々なハイテク製品に不可欠な資源ですが、中国一国によって生産が独占されています。しかし、中国政府は中国国内のレアアース埋蔵量は20 年以内に枯渇すると主張し、レアアースの輸出量を激減させています。したがって、とくに重希土類の新たな資源を見つけることが世界的に喫緊の課題となっています。そうした状況の中、私たちの研究グループは、太平洋の深海底に新規のレアアース資源(レアアース泥)を発見しました。このタイプの鉱床のレアアース資源量は陸上の埋蔵量の1000 倍に達すると推定されています。さらに、希酸で容易にリーチングできることや開発の障害になるトリウムやウランなどの放射性元素をほとんど含まないことなど際立った長所があり、将来有望なレアアース資源になると期待されます。私たちは、レアアース泥の成因を解明し、効率的な探査手法を構築して、最終的にはこのレアアース泥鉱床を開発することを目指しています。

深海底のレアアース泥の探査・開発Distribution of REY-rich mud in the Pacific Ocean (Kato et al., 2011 Nature Geoscience)

深海底のレアアース泥の探査・開発

深海底のレアアース泥の探査・開発

Research cruises for REY-rich mud in the Japanese exclusive economic zone

海底鉱物資源による全地球史46億年の
地球システム進化の解明

深海底には、私たちが発見したレアアース泥や、コバルトリッチクラスト、マンガン団塊、熱水性硫化物など多様な鉱物資源が存在します。こうした鉱物資源は、ベースメタルやレアメタルといった種々の有用金属の供給源としてだけでなく、過去から現在に至る地球環境の変動の過程で生み出されたものです。例えば、ジュラ紀後期には酸素に乏しい海洋がグローバルに発達し、還元的な環境で安定な硫化物鉱床や石油鉱床などの資源が大規模に生成されました。私たちが目指すゴールは、全地球史における海底鉱物資源の形成と、グローバル海洋環境やマントルまでも含めた物質循環との因果律を包括的に理解し、地球資源について全く新しい描像を描くことです。

海底鉱物資源による全地球史46億年の地球システム進化の解明Timing of Bessi-type volcanogenic massive sulfide deposition (Nozaki, Kato & Suzuki, 2013 Scientific Reports)

海底鉱物資源の成因解明

地球は,その表面積の約7割が海洋によって占められています.広大な海洋に眠る海底鉱物資源などのフロンティア資源を効率的に探査するためには,資源の成因を科学的に理解し,資源生成に必要な環境条件を満たす有望海域を絞り込むという,理論的なアプローチが欠かせません.そのために,高精度化学分析による海底鉱物資源の地球化学データの取得,高次元データの数理統計解析による起源物質・元素濃集プロセスの解明,数理モデル化による定量的検証を行い,海洋における資源生成=元素異常濃集という現象の本質を明らかにしたいと考えています.

海底鉱物資源の成因解明Statistical analysis of multi-element data (Yasukawa et al., 2016 Scientific Reports) 海底鉱物資源の成因解明Three key components for REY-rich mud

石油・天然ガス/地熱 Oil and Gas/Geothermal

松島 潤教授 Jun Matsushima, Professor

エネルギー収支分析

エネルギーの「質」は、私達の社会の質を決定する重要な要素です。採取の困難さ(ここでは、これを質と考えます)を数学的に表現するための一つの方法として、エネルギー収支比(EROI: Energy Return on Investment)があり、回収エネルギーを投入エネルギーで割り算することにより得られ、その比が1以上にならないとエネルギー的に無駄をしていることになります。現在、easy oil(容易に採取できる石油)の時代は終わったと認識されていて、これまで開発対象にならなかった条件の悪い油田(大水深、極地、小規模など)の開発に目が向けられています。石油を生産する過程においては、技術革新効果と地質的限界の相互作用により、その生産量が決定されてきますが、仮に技術革新効果によって、生産量を維持したとしても、エネルギー収支の観点からはその質が劣化するのか見極める必要があります。

地震波減衰を利用した地震探査手法の高度化

媒質の変化に伴う波形全体の形成プロセスにおいて重要な役割を担う地震波減衰の利用は実用段階にはありません。弾性波の減衰メカニズムについては、孔隙スケールでの粒子と孔隙中に存在する流体との相互作用であることが指摘されているものの、現状未解明です。音波検層波、VSP、反射法地震探査などの各種データを使用して弾性波減衰特性を解明するための減衰解析技術に関する研究を行っています。ミクロスケールでの固体- 液体共存系が弾性波減衰現象に及ぼす影響とその周波数依存性を室内実験により実証し、その減衰メカニズムを岩石物理学に基づいて理論的に解明することを目的とした一連の研究を実施しています。

地震波減衰を利用した地震探査手法の高度化 地震波減衰を利用した地震探査手法の高度化

佐藤光三教授 Kozo Sato, Professor
合田 隆准教授 Takashi Goda, Associate Professor

エネルギー資源開発と不確実性下の意思決定

エネルギー資源開発では、鉱区取得や開発手法の選択など多くの局面で重要な意思決定が求められます。一方で、遠隔地下の広大な油ガス田の特性を把握するのは困難であり、潜在的な不確実性を排除することは不可能です。正確な現象把握を前提とした決定論的アプローチに代り不確かさを認めたうえでの確率論的アプローチが必要との観点から、不確実性下の意思決定手法を情報の価値(VOI)等を利用して包括的に研究しています。

エネルギー資源開発と不確実性下の意思決定

非在来型資源開発のための統合型流動シミュレーション

資源開発の支援ツール整備は喫緊の課題です。例えばシェールガス開発では、水平坑井とフラクチャーが作る複雑な流動経路ならびに連続体の仮定から逸脱したクヌーセン流れまでも表現できるモデルが必要とされます。対象の性状とその不確定性を把握し、流体挙動を多側面から攻究することが重要です。このような観点から、FDM、CVBEM、LBM、CIP、MDなどを統合的に利用したシミュレーション技術の開発に取り組んでいます。

非在来型資源開発のための統合型流動シミュレーション

プロジェクトベースでの回収技術の向上

世界的なエネルギー需給の逼迫によって、在来型に加えて非在来型エネルギー資源(シェールガス・オイル等)の開発が急務となっています。一方で、難回収性貯留層からの人工採集には環境負荷の増大も懸念されています。エネルギー資源開発プロジェクトに関わる情報収集から開発・生産に至る各ステージにおける操業の最適化を研究目的とし、環境負荷を抑えながら資源回収率向上を達成する開発手法論の構築を目指します。これらの研究成果は、長期的な日本のエネルギー安定供給確保に貢献します。

プロジェクトベースでの回収技術の向上

メタンハイドレート Methane Gas Hydrate

増田昌敬教授 Yoshihiro Masuda, Professor

商業的開発を目指したメタンハイドレート研究

日本周辺海域の海底地層中に分布するメタンハイドレートは、エネルギー安全保障を強化する国産の天然ガスエネルギー資源として期待されています。経済産業省のメタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム(MH21)のプロジェクトリーダーを務め、メタンハイドレートの商業的開発を目指した先端研究に取り組んでいます。研究室では、メタンハイドレート層からのガス生産挙動を予測する貯留層シミュレータの開発、減圧法・熱回収法等のガス生産手法の評価、海洋メタンハイドレート開発の経済性の評価を行っています。

商業的開発を目指したメタンハイドレート研究World’s first gas production test from offshore methane hydrates

商業的開発を目指したメタンハイドレート研究Numerical simulation of hydrate dissociation in a porous medium

新しいガス生産プロセスの探求

新しいガス生産手法として、二酸化炭素(CO2)をメタンハイドレート層に圧入する方法が最近注目されています。CO2ハイドレートはメタンハイドレートよりも熱力学的に安定なので、多孔質媒体内でCO2がメタンハイドレートと接触すればハイドレート中のメタン分子をCO2で置換することができます。この手法は、CO2をハイドレート層に固定しながらメタンを回収でき魅力的なのですが、堆積物の孔隙を目詰まりさせずにCO2を連続圧入できるのかが大きな課題です。この課題を解決するために、多孔質媒体内の物質・熱の移動現象、相挙動を考慮した数値計算と室内実験を行い、CO2の新しい圧入プロセス(N2-CO2混合ガス圧入、CO2-水エマルジョン圧入)の確立を目論んでいます。

新しいガス生産プロセスの探求Concept of N2-CO2 gas mixture injection into methane hydrate reservoir

新しいガス生産プロセスの探求Experimental apparatus of C/W emulsion injection

分子触媒技術 Molecular Catalysts Technology

 

アンモニアからのエネルギー抽出

アンモニアは取扱いが比較的容易で、燃焼しても窒素と水のみを排出するクリーンなエネルギー源です。そのため、エネルギーをアンモニアの形で貯蔵・移動し、燃料電池などの形で利用できると、理想的なエネルギー輸送プロセスが可能になります。このように物質ベースでエネルギーを蓄え、利用する仕組みを作ることは、再生可能エネルギーなどの輸送しにくいエネルギー源を効率的に利用してくい上で大変重要な概念です。そこで、窒素からアンモニアへ、また、アンモニアから窒素へと相互に変換するような反応系を開発することで、新しいエネルギー輸送の概念の確立を目指しています。

アンモニアからのエネルギー抽出Ammonia Synthesis/Decomposition Cycle

分子触媒の開発

アンモニアや有機分子などの分子の変換反応を効率よく達成するためには、通常、適切な触媒を用いる必要があります。触媒には様々なものがありますが、遷移金属錯体などの分子触媒は、配位子を用いて金属中心の反応性が制御できるため、精密な触媒デザインが可能です。様々な触媒を設計することで、化学反応を自在に設計することができます。このような分子デザインを駆使してアンモニアと窒素の相互変換反応を開発しています。

分子触媒の開発Catalysts developed by our group 分子触媒の開発Examples of Achievements

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